
かつて法人保険市場では、「全損定期保険」が大きな注目を集めていました。支払った保険料のほぼ全額を損金計上でき、さらに将来的には高い解約返戻金を受け取れることから、多くの中小企業が導入していました。
しかし税制改正以降、「全損保険は終わった」「もうメリットはない」という声を耳にすることも増えています。はたして、本当に全損保険は使えなくなったのでしょうか。
結論から言えば、全損保険は今でも存在しており、活用価値の高い商品もあります。
ただし、以前とは考え方や活用方法が大きく変わっています。
ということで、税制改正後の法人保険の現状や、全損保険が今でも活用できる理由、導入時の注意点について見ていきましょう。
かつての全損保険ブームとは?
税制改正前、法人保険市場では全損定期保険が空前のブームとなっていました。
当時の代表的な商品は、
- 保険料を全額損金算入できる
- 解約返戻率が85%前後
- 商品によっては90%超
という特徴を持っていました。
そのため、「節税しながら将来の資金を準備できる」として多くの中小企業に導入されていました。
保険会社だけでなく、税理士が提案に関与するケースも珍しくありませんでした。
税制改正で全損保険はどう変わったのか?

こうした状況を受け、法人保険を利用した過度な節税対策を抑制するため税制改正が行われました。
その結果、以前のような高返戻率型の商品は大幅に減少しました。
現在の全損保険には主に次のような制限があります。
返戻率の高い商品が減少した
以前は85%〜90%以上の返戻率を持つ商品もありました。
しかし現在は返戻率の高い商品に対する規制が強化され、商品設計そのものが大きく変わっています。
30万円ルールが導入された
現在でも全損扱いとなる法人保険は存在します。
ただし一般的には、年間保険料30万円までという制限があります。
いわゆる「30万円ルール」です。
そのため、以前のような高額契約による節税スキームは利用しにくくなっています。
全損保険はまだ使えるのか?
結論から言えば、全損保険はまだ使えます。ただし、「使い方が変わった」というのが正確な表現でしょう。
税制改正前は節税効果そのものに注目が集まっていました。
しかし現在は、
- 役員退職金準備
- 事業承継資金
- 設備投資資金
- 財務体質の強化
- 万一の保障
など、経営課題を解決するための手段として活用されるケースが増えています。
税制改正後でも「損をしない」可能性は十分にある
税制改正後の法人保険を語る際、多くの経営者が気にするのが返戻率です。
確かに以前のような90%近い返戻率の商品は少なくなりました。しかし、返戻率だけで判断するのは適切ではありません。
例えば法人税率を33.58%と仮定すると、保険料を損金算入した場合の実質負担は約66%程度になります。
つまり、解約返戻率が67%を超えていれば、税効果まで含めると実質的に損をしていないという考え方もできます。
もちろん保険だけで判断するべきではありませんが、「返戻率が下がったから価値がなくなった」というわけではないのです。
解約返戻金を活用した資金準備という考え方

税制改正後も法人保険が活用されている理由の一つが、解約返戻金による資金準備です。
例えば、
- 役員退職金
- 事業承継資金
- 設備更新費用
- 新規事業投資
などに活用できます。
銀行預金だけでは資金が残りにくい企業でも、法人保険を活用することで半強制的に資金を積み立てることができます。
重要なのは、「節税できるから加入する」ではなく、「将来必要な資金をどう準備するか」という発想です。
なぜ全損保険は話題にならなくなったのか?
全損保険そのものがなくなったわけではありません。
それでも以前ほど話題にならない理由があります。
商品が複雑化した
近年は変額保険など、保険以外の要素も組み込まれた商品が増えています。
引受ルールが厳しくなった
従業員を被保険者とする契約などは、保険会社ごとに細かなルールがあります。
提案できる担当者が減った
現在の法人保険は、
- 税務
- 財務
- 事業承継
- 退職金制度
などを理解した上で設計する必要があります。
以前より提案の難易度が上がったため、十分な説明ができる担当者は決して多くありません。
税制改正後でも活用価値のある法人保険とは?

税制改正後でも活用価値の高い法人保険は存在します。
実際には、商品によってはブーム当時を上回るパフォーマンスを発揮するケースもあります。
ただし、それを見つけるには専門知識が必要です。
重要なのは、
- どの保険会社を選ぶか
- 誰を被保険者にするか
- どのタイミングで解約するか
- 何のために資金を準備するのか
を総合的に設計することです。
まとめ|全損保険は終わったのではなく「選ぶのが難しくなった」
税制改正によって、かつての全損保険ブームは終わりました。
しかし、全損保険そのものがなくなったわけではありません。
現在でも、
- 解約返戻金を活用した資金準備
- 役員退職金対策
- 事業承継対策
- 財務基盤の強化
など、多くの場面で活用できます。
重要なのは保険商品だけを見ることではありません。
法人保険は経営戦略の一部として考えるべき金融商品です。
そして税制改正後の今だからこそ、「どの保険に入るか」よりも、「誰に相談するか」が重要になっているのです。
もし現在加入している法人保険の内容に疑問を感じたり、これから導入を検討したいと考えている場合は、「税務・財務・保険を総合的に理解している担当者」へ相談することをおすすめします。
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